借地権付建物の鑑定評価(法人とその代表者である個人との売買)大阪市西部

大阪市西淀川区の鑑定評価

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

大阪市西部(福島区、港区、此花区、大正区、西区、西淀川区)で法人とその代表者個人間の売買の鑑定評価をさせて頂きました。

大阪市西淀川区
大阪市西部

こういった法人とその代表者個人間の売買や同族間売買などは税務調査の対象となりやすいことから、ご相談を受けることがあります。

話は変わりますが、知り合いから、法人とその代表者個人間の賃貸借について税務署から質問を受けているので、対応方法を教えてほしいと言われたので、地代に関する様々なアドバイスをしました。税務署の考える周辺の賃貸借の相場観から逸脱した法人と役員の間の賃貸借契約を行い、鑑定評価書を取得していないケースでは、税務署は厳しい判断をすることが多いように見受けられます。もちろん、その時の鑑定評価額も適正な地代の範囲に入っている必要はありますが、鑑定評価で合理的な評価額が出ている場合、それが否認されることは、私の知っている範囲ではないです。

この借地権付建物の鑑定評価は、そのようなリスクを避けるため、事前に鑑定評価書を取得しているケースです。

同じ金額の鑑定評価書が発行された場合でも、事前に取得され、その金額で適正に売買するときと、売買の後に税務調査が入り、その売買金額は適正な範囲だったと鑑定評価で証明する場合では、前者が明らかに有利と思います。

 この案件では、作業場などの賃貸収益をベースとした複合不動産の価格形成が行われていない工業地に存すること、借地権付建物の比較対象と成る複合不動産の取引事例が見当たらなかったので、積算価格を試算し、鑑定評価額を決定しました。

不動産鑑定評価基準:借地権付建物

借地権付建物とは、借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権をいう。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

不動産鑑定評価基準:借地権及び借地権付建物の鑑定評価

借地権の価格は、借地借家法に基づき土地を使用収益することにより借地権者(借地人)に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものと考えられています。

 借地人に帰属する経済的利益とは、土地を使用収益することにより、その土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得ることが可能な借地人の法律により保護された安定的利益と適正地代と実際に支払っている地代との賃料差額の持続する期間で成り立つ経済的利益の現在価値を言います。このうち、この価値は、慣行的に取引の対象 となっている部分が借地権価格となります。

借地権の鑑定評価を行う際には、借地権の取引慣行の有無とその成熟の程度によっ てその求め方が異なるので注意が必要です。

ア 借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域

借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に 基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び借地権取引が慣行として成熟している場合における当該地域の借地権割合により求めた価格を関連づけて決定するものとする。

イ 借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域

借地権の鑑定評価額は、土地残余法による収益価格、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び当該借地権の存する土地に係る更地又は建付地としての価格から底地価格を控除して得た価格を関連づけて決定するものとする。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

この場合においては、次の事項を総合的に勘案すべきです。主なものを例示すれば以下のとおりです。

賃料の改定の実現性、建物の残存耐用年数、契約締結の経緯、一時金の内容、借地権の取引慣行の有無、更地価格、借地期間満了時の建物の取り扱いなど。

なお、借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではないことに注意しなくてはならない。これは、賃料差額である借得部分が存しない場合、その借地人が得るべき経済価値が存在しないことになり、理論的に借地権価格を説明することが困難な場合が考えられるからです。ただし、賃料差額である借得部分が存しない場合でも、借地権価格をゼロにするのは適当ではないと思われます。

この場合、以下の 借地権の態様に留意すべきです。

ア 創設されたものか継承されたものか。

イ 地上権か賃借権か。

ウ 転借か否か。

エ 堅固の建物の所有を目的とするか、非堅固の建物の所有を目的とするか。

オ 主として居住用建物のためのものか、主として営業用建物のためのもの か。

カ 契約期間の定めの有無

キ 特約条項の有無

ク 契約は書面か口頭か。

ケ 登記の有無

コ 定期借地権等(借地借家法第二章第四節に規定する定期借地権等)

不動産鑑定評価基準、国土交通省

借地権付建物で、借地権者が使用している場合は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとすると規定されています。

借地権付建物で、当該建物が賃貸されている場合は、実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準と し、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとすると規定されています。  

借地権(付建物)の論点

借地権(付建物)のDCF法における評価において、売却費用に、譲渡承諾料(名義書換料)を含めるべきかという論点があります。

名義書換料は、地主に支払う手数料であり、借地権価格を構成しないと解されていますが、DCF法による評価では、当該純収益を得るために必要な費用があれば、仲介手数料と同様に、これを控除する必要があります。DCF法は、保有期間中におけるキャッシュフローに着目した鑑定評価の手法で、「復帰価格」の査定は、通常、「売却価格-売却費用」であることから、名義書換料が慣行的に授受されると判断され、地主に支払う必要がある場合は控除すべきという考えです。

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