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不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)
大阪府南河内地域(富田林市、大阪狭山市、羽曳野市、藤井寺市、松原市など)で不動産の鑑定評価を行ったことがあります。今回の案件は、一棟の収益マンションの不動産鑑定評価のお話です。
一棟の収益マンションの共有者(兄弟)の一方からご依頼があるケースでは、兄弟間の売買金額が低廉な場合、贈与として認定課税されるリスクがあるので、それを避けることが目的のことが多いです。

当該物件は、過去に市街化調整区域だったときに当時の申請(農家住宅)とは異なる一棟の収益マンションが建築され、その後、市街化区域に編入され物件でした。申請時の用途と現在の用途が同一だった場合、既存不適格物件と考えることが妥当ですが、農家住宅として申請し、その後、建築確認とかなり用途や規模の異なる収益マンションが建築されている場合は、既存不適格物件とは言えません。
当該物件は、第2種低層住居専用地域(容積率60%)に所在し、価格時点で3倍近くの容積率を消化する収益マンションで、収益性はそれなりの水準にありました。ただし、このような物件は、金融機関の融資が受けられない可能性があり、仮に受けられたとしても不利な条件となる可能性が高いので、収益価格を求める場合の還元利回りに反映させる必要がありました。この案件では還元利回りと資本的支出をしっかり見ることで、積算価格未満の評価額となりました。
この依頼者は、弊社にお話をする前に地元の不動産仲介会社に査定を頼み、価格水準を把握していたようです。その時の査定金額より弊社の鑑定評価額の方が低かったようです。 積算面を積み上げれば、価値はありますが、投資用不動産としてのリスクを反映した収益価格のほうが説得力があると思います。
不動産鑑定評価基準:貸家及びその敷地
貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建 物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう。
不動産鑑定評価基準、国土交通省
不動産鑑定評価基準:貸家及びその敷地の鑑定評価
貸家及びその敷地の鑑定評価は、実際実質賃料という支払賃料の一時金の運用益や償却額を考慮して求めた実質賃料に基づいて純収益を求め、この純収益の現在価値の総和を、直接還元というやり方、DCF法というやり方より求めた収益価格を標準とします。収益不動産の場合、収益価格がメインなので、積算価格と比準価格は比較考量して決定す ることになっています。
この場合、一戸建て住宅が収益物件になっていたからと言って、収益価格がメインとなるとは限らないことに注意が必要です。収益性の低い一戸建て住宅のオーナーは、低収益の収益価格で売却を考えず、借主が退去したあとの自用の建物及びその敷地になってから 売却することも考えられるからです。この場合は、借家人の状況、退去の可能性などを考慮することが必要と思います。
上記は、出ていった場合の可能性ですが、それ以外に、賃借人が購入するケースも考えられます。この場合、不動産鑑定評価基準で、貸家及びその敷地を賃借人が買い取る場合には、当該物件が、「自用の建物及びその敷地となることによる市場性の回復等に即応する経済価値の増分」が発生する可能性があると記載し、注意喚起いしています。
また、貸家及びその敷地の鑑定評価において、将来における賃料が下落する可能性や、契約に当たって受け取る一時金の額、将来もらえる一時金の額、賃貸借の経緯、契約期間、建物の残存耐用年数、投資用不動産の投資利回り、定期建物賃貸借であるかについて留意する必要があります。
原価法(簡単な解説)
原価法は、簡単に言えば、土地価格に建物価格を加算して求めます。この場合、土地価格は、取引事例比較法で求め、必要に応じて、土地残余法等を適用します。建物価格は新築時の想定価格(再調達原価)から、物理的で減価やそれ以外の観察減価等を考慮した減価額を控除して求めます。
収益還元法(簡単な解説)
収益還元方は、直接還元法やDCF法により求めます。DCF法のほうが最先端で優れた手法という認識を持つ方が多いと思いますが、DCF法は収支の想定(家賃の下落予測、経費の将来変動予測など)が増えるので、適切な将来予測をしなければ、かえって規範性の低い価格になるので注意が必要です。
REIT 収益マンション 評価先例
以下の桜川の物件は、7億くらいの積算価格ですが、収益で見れば10億を超えています。大阪の福島の物件は、積算も収益も5億円前後です。CAP RATEは、4.4%から4.8%くらいで、不動産投資家調査より、少し低い利回りです。



REIT 投資用不動産の期待利回り
大阪のワンルームマンションの期待利回りは、4.9%で、横浜、名古屋より少し低いですが、あまり変わりません。東京は4.3%から4.5%程度で、大阪のワンルームマンションの期待利回りと、大きく違わないのに驚きました。昔は、かなり差があったと思いますが、最近は、こんなに接近してきているのですね。この利回りの違いなら、東京の物件のほうが、需要者が多く、売れそうに思います。

建ぺい率

建ぺい率は土地面積に対して建てられる建物の建築面積の割合いのことを言い、以下のようになります。建築面積はおおざっぱに言えば建物の床面積です。通常は、1階部分の床面積になることが多いです。
厳密には建物を真上から見たときの水平投影面積を言います。
建ぺい率=建物の建築面積÷敷地面積
容積率

容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことを言います。容積率には指定容積率と基準容積率があり、道路幅員等を考慮した基準容積率で容積率が計算される。
容積率オーバー
この基準容積率を、対象物件の容積率が超過する場合、容積率オーバーの可能性がある。ただし、登記床面積と容積率を計算する床面積の違い(容積不算入部分等)もあり、登記床面積が敷地面積に基準容積率を乗じた床面積を超過しているからと言って容積率オーバーとは限らない。また、既存不適格建築物の可能性も調査しなくてはならない。
まとめ
この案件でお伝えしたいのは、不動産の調査において、過去の建築確認や検査済みの有無を確認することによって、違法建築の可能性や既存不適格建築物であるかを調査可能ということです。現在の基準容積率と現状の当該物件の容積率を比較することによって容積率オーバーを確認できます。そして、これらの要因が不動産の融資(借入金利、借入の可能性)や出口戦略(将来的な売却)に影響を与え、それが収益価格を求める際の還元利回り等に影響を与えるということです。

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