不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)
知り合いの紹介で大阪府南河内地域(富田林市、大阪狭山市、羽曳野市、藤井寺市、松原市など)の大手都市銀行の支店融資部に係る融資案件で担保評価したときのお話です。 ダンスで有名な大阪の登美丘高校の近くの地域の物件でした。
このような融資に係る担保評価のお話をもらった場合、最初に、その金融機関の指定鑑定士でなくても構わないか確認して下さいと依頼者に伝えます。
なぜなら、担保評価は、金融機関の本部が特定の不動産鑑定士に評価を依頼することが標準で、依頼者が担保評価で不動産鑑定士を選ぶことは困難なケースが多いからです。
この案件は、それをOKしてもらえました。今まで、同じように担保評価のお話を頂き、OKだった場合、その金融機関の指定の不動産鑑定士で無いことから駄目だったことがあります。
私はある金融機関の本部で担保評価に関し、金融機関の指定された不動産鑑定士をしていましたが、その金融機関の支店の融資案件で、私がその金融機関の指定された不動産鑑定士かを確認することもなく、融資希望者の依頼で、担保評価のお話がありました。
このことから、金融機関によっては、融資部の力が強い場合、あるいは別の要因で、依頼者が担保評価に関し、不動産鑑定士を選ぶことが可能な場合もあるようです。
その物件は、戸建住宅で、簡単な案件だったのですが、調査をしてみて、当事者から聞いていなかった大きな減価要因が出てきたことがあります。
そんなに難しい話では無いのですが、調査の結果、対象不動産が面している位置指定道路の私道負担をしており、土地の個別的要因で20%近い減価をする必要が出てきたからです。
こういう私道負担を見分けるのは、難しくないのですが、不動産に詳しくない方では分からないかもしれないので、簡単に解説しますと、 まず、法務局調査で公図を見たとき気づきました。公図の中の道路部分に分筆がなく、本件土地と道路の対面(反対側)の土地がくっついていたからです。気になり地番図を取得すると、その地番図には、道路部分が薄く色が塗られており、本件土地にその薄い色の道路がかかっていました。現地で慎重に奥行きや道路の幅を調査し、私道負担の面積を確定しました。 その土地の所有者は、今まで公簿面積が宅地部分と考えていたと思われますが、実際には私道負担しているケースも散見されます。
ここで位置指定道路とは、建築基準法上の道路(私道)であり、特定行政庁が指定をした道です。幅員が4m以上あり、かつ、一定の技術的水準に適合する道路について、位置指定道路の認可を得ることにより、建築基準法上の道路と認められます。
担保不動産の評価額(鑑定評価以外の基礎知識)
担保評価額は、住宅ローンなどの融資の際に、担保として設定する担保不動産の評価額のことです。 銀行が融資を実行するとき、返済できなくなった場合に備え、資金の回収が可能なように、不動産の担保を取得します。その担不動産に融資金額にふさわしい担保価値があるかどうかを評価することを「担保評価」と言います。
不動産の担保評価額は、銀行が不動産鑑定士の担保評価やGIS地価システムより求めた推定時価をベースに、銀行ごとの担保掛目を乗じて求めます。担保の掛目は住宅ローンの内容や信用保証協会の有無により変わります。70パーセントくらいを目安に定めらているようですが、売買金額のフルローン、オーバーローンなども見られるので、近年、この担保掛目はもっと高い数値の可能性があります。
なお、銀行の融資金額は、「個人の属性」と「担保評価」で決まります。担保評価が高いほうが銀行は融資をしやすくなります。それは、融資した金額が返済されなかった場合には、担保不動産を競売などで処分することにより資金を回収できるからです。
しかし、実際の住宅ローン(借り換えを含む)の融資は、個人の属性を重視している印象があります。借り換えの際に、不動産の時価が融資金額の2倍でも、借り換えの融資期間が短く(10年超15年未満)、返済金額が高い場合(年間住宅ローン返済額÷年収)、銀行の年収比率の基準で、融資対象からはじくこともあるようです。物件の売却により融資金額を確実に返済できるからと言って全ての銀行は住宅ローンの融資しないようです。
なお、公務員や上場企業の会社員は高く評価され、不動産鑑定士等の士業を含む自営業者は、銀行系の住宅ローンよりアルヒなどのフラットなどのほうが審査が通りやすいようです。