ゴルフ場の鑑定評価(企業の株価算定のための評価)東海地区

ゴルフ場の鑑定評価(企業の株価算定のための評価)東海地区

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

東海地区(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)を含む複数のエリアで資産家の相続時における事業承継の際の株価算定のために、2つのゴルフ場の鑑定評価を行いました。

東海地区
東海地区

ゴルフ場の相続財産評価額が10億円や20億円を超えるようなケースは珍しくなく、ゴルフ場の実際の売買価格の相場を知らない方は、当初100億円近くの費用をかけて開業したゴルフ場の時価が10億円と言われても、それが正しいのか、間違っているのか判断に迷うと思われます。

ゴルフ場の売買事例が存在し、ずばりその対象の事例が存しない場合でも、相場観の把握に役立つゴルフ場の売買事例を調査することから検証することをお勧めします。

本件では、上記調査により説得力のある説明が可能だったので、DCF法による収益価格をベースにゴルフ場の鑑定評価を行い、相続税の財産評価基本通達に基づいた評価額の半値未満の鑑定評価額で株価算定を行い、納税されました。後に、税務署ではなく、国税局の税務調査が入ったそうですが、ゴルフ場の鑑定評価額については、何も言われなかったそうです。

ゴルフ場の固定資産評価や相続財産評価は、積算面から価格を求める手法であることから、ゴルフ場によっては、実際のマーケットより高い評価となっている可能性はあります。それでは、なぜ、ゴルフ場の固定資産評価や相続財産評価は、収益面からの検証がなされないかと言えば、収益マンション等の評価と違い、ゴルフ場は事業収益から求めるため、そのような事業収支の資料がゴルフ場から開示されない限り、適正な鑑定評価を行うことは不可能であり、事業収支を想定して収益価格を求める場合、説得力が無く、かえって評価の信頼を毀損するからです。また、事業収支の場合、年度ごとに評価が変わる可能性があり、3年に1回見直しする公的評価には実質的に活用できないでしょう。公的評価は、積算面からの価格として見れば適正ですが、収益性からの検討がなされていないことから、案件によっては、検証することも必要でしょう。

ゴルフ場の運営形態

・パプリック

・セミパプリック

・メンバ-シップ

ゴルフ場の敷地の権利関係

・全部が完全所有権(借地なしのゴルフ場)

・全部が借地しているゴルフ場

・所有権と借地権の併存型(比較的多いタイプ)

ゴルフ場の特殊性

・雪や天候の影響を受ける。

・借地が多く、権利関係が複雑で、筆数が多い

・公図に全ての地番が確認できないケースや他人地の介在に注意が必要

・オペレーションへの依存が大きい

・収益性で評価されるが、最近、廃業が多く、メガソーラーへの転用が多い

ゴルフ場のコースのタイプ

・林間コース

・丘陵コース

・山岳コース

・河川敷コース

上記コースのうち、丘陵コースが大半で、それ以外に林間コースが30%未満のイメージです。山岳コース、河川敷コースは、散見される程度のイメージです。林間コースは、ゴルフ場が日本で最初にできた時期に、平野部からコース開発がなされたことから、伝統のある名門コースが多いです。起伏のあまりない平坦なコースです。丘陵コースは、丘陵地に造成されたゴルフ場です。

時価の概念(財産評価基本通達)

財産評価基本通達における時価とは 財産の価額は時価によるものとし、時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者問で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。

相続税法第22条「評価の原則」

財産の価額は時価によるものとし、時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者問で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。

財産評価基本通達における時価

株価算定方法(企業価値評価・事業価値評価の方法)

深井コンサルティング株式会社
深井コンサルティング株式会社

国税庁の財産評価基本通達83

(ゴルフ場の用に供されている土地の評価)

83 

ゴルフ場の用に供されている土地(以下「ゴルフ場用地」という。)の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平3課評2-4外・平11課評2-2外・平16課評2-7外改正)

(1) 市街化区域及びそれに近接する地域にあるゴルフ場用地の価額は、そのゴルフ場用地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額にそのゴルフ場用地の地積を乗じて計算した金額の100分の60に相当する金額から、そのゴルフ場用地を宅地に造成する場合において通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費に相当する金額として国税局長の定める金額にそのゴルフ場用地の地積を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。 (注) そのゴルフ場用地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額は、そのゴルフ場用地が路線価地域にある場合には、そのゴルフ場用地の周囲に付されている路線価をそのゴルフ場用地に接する距離によって加重平均した金額によることができるものとし、倍率地域にある場合には、そのゴルフ場用地の1平方メートル当たりの固定資産税評価額(固定資産税評価額を土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された地積で除して求めた額)にゴルフ場用地ごとに不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によることができるものとする。

(2) (1)以外の地域にあるゴルフ場用地の価額は、そのゴルフ場用地の固定資産税評価額に、一定の地域ごとに不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。

第10節 雑種地及び雑種地の上に存する権利 、国税庁

ゴルフ場の相続税評価 土地の中でもゴルフ場として利用されている土地については、相続税についての評価は特殊なものとなります。

具体的には、国税庁の財産評価基本通達83「ゴルフ場の用に供されている土地の評価」において定められています。 この通達によると、ゴルフ場の相続税評価の方法は、原則として、固定資産税評価額に国税局長が定めた倍率を掛けて求めることとなっています(83−2)。

ただし、ゴルフ場が都市計画法上の市街化区域または市街化区域に隣接する地域にある場合には、宅地とした場合の1平米の価格にゴルフ場の面積を乗じて算出した額の60パーセントの額から、その土地を宅地造成したとしたら通常かかるであろう費用として国税局長が定めた額を差し引いたものということになります。 つまり、市街化区域やこれに隣接する区域にゴルフ場がある場合には、宅地と仮定して、その60パーセントの金額から、宅地造成に必要な金額を差し引いたものを評価額とするという計算によるということになります。 これは、市街化区域やそれに近い地域のゴルフ場の価値は、高いものという認識があるように思われます。 また、宅地に変えることも考慮に入れ、宅地のおおむね6割程度の価値はあるという認識が基礎にあるとも考えられます。 このようにゴルフ場については、市街化区域に保有している場合などには特殊な考慮が必要となります。

税理士法人チェスター

大阪府のゴルフ場 評価倍率(参考まで)

大阪府 財産評価基準書
大阪府 財産評価基準書
大阪府 財産評価基準書

家屋の固定資産税評価額に乗ずる倍率

建物は、固定資産税評価額と同じ金額が、相続財産の評価額となります。

固定資産税評価額 × 1.0 = 評価額

ゴルフ場等が借地の場合の考え方

借地部分の権利割合は素地価格の10~15%程度と言われるが、地代が高い場合、その借地にそれほどの価値があるか微妙である。

ゴルフ場は借地の場合もあり、その場合は以下の論点に注意して下さい。

法人税の考え方は、我々が考える借地権の考えと異なり、建物が建っているかは問わず、単なる土地の賃借権のことを借地権と考えています。このことから、ゴルフ場には法人税法で把握される借地権は存在します。

No.5730 権利金の認定課税について

法人が所有する土地を他人に賃貸し、建物などを建てさせたときには、借地権が設定されたことになります。  この場合、通常、権利金を収受する慣行があるにもかかわらず権利金を収受しないときは、権利金の認定課税が行われます。  

ただし、次のいずれかに該当する場合には、権利金の認定課税は行われません。

(1) その土地の価額からみて、相当の地代を収受している場合

(2) その借地権の設定等に係る契約書において、将来借地人がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、「土地の無償返還に関する届出書」を借地人と連名で遅滞なくその法人の納税地を所轄する税務署長に提出している場合

上記(2)の場合、実際に収受している地代が相当の地代より少ないときは、その差額に相当する金額を借地人に贈与したものとして取り扱います。  なお、相当の地代はおおむね3年以下の期間ごとに見直しを行う必要があります。

(法法22、法令137、法基通13-1-1、13-1-2、13-1-7、平元.3直法2-2)

No.5730 権利金の認定課税について

しかし、相続税法の財産評価で借地権が存在することにならないことに注意しなくてはなりません。

ゴルフ場敷地の上にクラブハウスは存在します。しかし、ゴルフ場の大半は、コースや残置森林などであり、土地の大半には建物が建っていません。

しかし、ゴルフ場の敷地の全体で考えた場合、コース部分が「主」であり、クラブハウスやコース管理棟、車庫等の建物部分は「従」の関係となります。そのためクラブハウスなどの敷地は、相続税法上の考えでは、借地権は存在しないことになっています。このことから、借地している土地の評価は底地評価にはならないようです。

最高裁の判例(昭和44年12月5日) で、ゴルフ練習場として利用するために結んだ土地の賃貸借契約については、建物が建てられていたとしても、主たる目的が建物の所有の目的ではないとして、借地法の適用を否定した判例があるようです。

借地借家法の適用があれば,解約に正当事由が必要となるなど,借地人が大きく保護されますが,法の適用がないとすると,借地人にとって有利な借地借家法上の諸規定が適用されないということになります。 本件(最高裁平成25年1月22日判決)では,ゴルフ場として利用するために締結した土地の賃貸借契約や地上権設定契約について,借地借家法11条に規定される地代減額請求の定めが類推適用されるのかどうかが問題となりました。

本件で問題となったのは,昭和63年にゴルフ場のコースとして締結された賃貸借契約及び地上権設定契約で,平成3年にゴルフ場としてオープンしましたが,経営不振のため,ゴルフ場経営社側が,賃料・地代の減額請求をしました。 土地の賃貸借契約の賃料については,民法上,田畑などの収益を目的とする ものに限って減額請求が認められていますが,「宅地」には適用されないとされており,ゴルフ場としての利用についても「宅地」に当たるとされています(民法609条)。

また,地上権についても,同様です(民法266条1項,274条)。

しかし,当事者で取り決めた賃料・地代が,その後の地価,税金の高騰下落によって付近の相場とかけ離れた場合には,そのままの賃料にしておくことは妥当ではないという考え方から,借地借家法11条で賃料の増減額請求というものが定められています。 本件で,ゴルフ場側は,この借地借家法11条が類推適用されるのだと主張したところ,2審判決ではこの主張が通りました。 類推適用というのは,条文の規定がそのままズバリ適用されるわけではないが,似たようなケースであるので,同じように処理しようという考え方です。

しかし,最高裁では,本件では類推適用する余地はないとして破棄されました。 そもそも,借地借家法の借地に関する規定は建物の保護,土地の安定的な利用を目的としているところ,本件では,そもそも本件土地上に建物が建てられているということが記録上も窺われず,借地借家法の規定を類推する基礎を欠くとされました。

弁護士江木大輔様 (江木法律事務所)    

公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会に寄せられた質疑応答集

質問概要

ゴルフ場の鑑定評価における試算価格の調整と鑑定評価額の決定について。 ゴルフ場の評価なので収益価格を重視すべきかと思うが、積算価格について何割までなら鑑定評価額に織り込んでもよいという基準などはあるか。

回答

ご指摘のような「判断基準」は、当連合会では特に示しておりません。 ご承知の通り、試算価格の調整は、対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性並びに各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性をふまえて、各試算価格の説得力を判断します。

その結果に基づいてどの試算価格を重視するかの判断を行うものです。 一般的には、ゴルフ場の評価では、昨今の市場特性等を踏まえ、収益価格が重視されることが多いと思いますが、市街地に隣接するゴルフ場などの場合(ゴルフ場以外に転用可能な場合などで土地価格が比較的高い場合など)では、最有効使用の観点等を踏まえ、積算価格が重視される場合も考えられ、すべての場合で収益価格が重視されるとも言いきれません。

公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会に寄せられた質疑応答集
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