調停事件の鑑定評価(遺留分減殺請求)相手側の根拠は仲介会社の査定書、兵庫県

調停事件の鑑定評価(遺留分減殺請求)兵庫県の海沿いの地域

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

この案件は、遺留分減殺請求に係る調停事件において、適正な不動産の時価を把握するためでした。

遺留分減殺請求に係る調停事件は、今まで何度か経験があり、当事者の双方から鑑定評価書が提出されることが多いです。この兵庫の案件のケースでは、相手方の根拠資料が不動産仲介会社の査定書でした。

兵庫県
兵庫県

あまり知られていないのですが、報酬を得てこのような査定書を発行することは不動産鑑定業法違反になる可能性があるのです。このようなことを知らずに、依頼する方がいることを残念に思うと同時に、相手としてはやりやすいいなと思います。

不動産鑑定士から見れば説得力の無い内容(土地価格は路線価比)であることが多く、裁判で争われる場合、両方が仲介会社の査定書だったら差は付きませんが、片方が鑑定評価書の場合、その査定書は不利と思います。土地の価格は、地方都市にいけば、路線価を比率で求めた価格より実勢相場が低いこと、都心部に行けば逆に高いことは、珍しくありません。実際に周辺の取引を分析しないと、適正な時価の説得力のある説明はできません。

規模の大きな新興住宅地(開発団地)に対象不動産がある場合は、更地の事例をインターネットで収集したり、路線価により簡易に求めても、結論に差が出にくいので、このようなやり方で問題ないように思われますが、相場観が分かりにくい地域の物件では、地元の不動産鑑定士のほうが地価に精通しています。

不動産仲介会社の査定書と、ほとんど変わらないような報酬で報告書等を作成する不動産鑑定士もいると思いますので、依頼内容(内部使用目的か否か)にもよりますが、不動産仲介会社の査定書以外の選択肢もご検討下さい。

遺留分減殺請求とは(鑑定評価以外の基礎知識)

ご自身の遺留分を侵害された遺留分の権利者やその承継人は、ご自身の遺留分を侵害された金額に相当する金銭の支払いを請求できます。これを遺留分侵害額請求と言います。 遺留分の権利を持った方が遺留分侵害の請求について意思表示を行った後、話し合いが行われたり、調停を申立てたりすることが多く、その後、解決がなされないときに、訴訟提起がなされます。

調停前置主義(鑑定評価以外の基礎知識)

訴訟の提起前に、調停の手続きをしなければならないとする考えを、「調停前置主義」と言います。 離婚の訴えや婚姻の取消、認知の訴えなど、基本的身分関係の存否を巡る紛争、その他、家庭に関する事件については、調停前置主義が適用されます。したがって、先に訴訟を提起しても、その事件は先に調停に付されます。

価格等調査についての公式見解

「価格等調査」とは、「不動産の価格等を文書等に表示する調査」をいい、対象となる不動産を特定し、当該対象不動産の価格又は賃料を文書又は電磁的記録に表示する調査をいうと考えられる。

つまり、

(1)対象となる不動産を特定しているか否か、

(2)当該対象不動産の価格又は賃料を文書又は電磁的記録に表示しているか否かが、 価格等調査ガイドラインの適用範囲となるか否かの判断基準となる。

公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会に寄せられた質疑応答集

不動産販売会社の調査報告書

不動産鑑定士の名前の無い報告書(不動産販売会社)

上記、不動産販売会社の報告書の特徴

・不動産鑑定士の名前や資格が無い。

・対象不動産の所在や地番を表示

・グーグルマップや登記の内容で対象不動産の確定

・土地価格は公示価格を路線価の比率で査定

・建物は固定資産評価額を採用

・収益物件は収益価格を査定

・査定過程を経て、具体的な価額を表示(簡易査定額という名前で)

・不動産販売会社が作成

路線価比などより土地価格を簡易に求める行為は、鑑定業界で容認されていたかもしれませんが、具体的な資料から収益価格を求めることは、不動産鑑定業務の範囲と思われます。

なお、上記で問題となるのは、報酬を得て、不動産調査報告書などを作成する行為に限ります。なお、仲介に関する無料査定は問題ないです。

不動産の調査報告書と鑑定業との関係(論点)

◆価格等調査ガイドラインの適用範囲及び鑑定法の鑑定評価

報告書の名称を問わず、対象不動産の価格又は賃料が表示される場合は、価格等調査ガイドラインの適用範囲となります。

 報告書に表示された対象不動産の価格又は賃料が、不動産の経済価値の判定に該当すれば、鑑定法第2条第1項に定める「不動産の鑑定評価」に該当すると考えられます。

◆宅地建物取引業者の価格査定と鑑定法の不動産鑑定業

鑑定法第2条第2項において、「不動産鑑定業とは、自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業」と定義されています。

 ただし、不動産仲介会社の行う媒介契約に付随する無料の価格査定は、鑑定法の不動産鑑定業には該当しないと考えられています。

◆対象不動産の価格を幅で表示する業務などについて

対象不動産の価格を幅で表示する業務であっても、対象となる不動産を特定し、当該対象不動産の価格を幅で表示している場合、価格等調査ガイドラインの適用範囲となると考えられています。

  この場合、鑑定評価の手法を適用しているか、単価で示しているか、総額で示しているか、価格の幅で示しているかにかかわらず、「価格等を示す」行為に該当するようです。

適用範囲外の具体的な例として、対象となる不動産を特定せず、特定の地域のオフィスビルの賃料水準を求める場合が考えられます。 

このホームページの運営者

コメントを残す