区分所有店舗の鑑定評価(相続財産の評価)大阪府豊能地域

区分所有店舗の鑑定評価(相続財産の評価)大阪府の北部

不動産鑑定評価ケーススタディー(この案件の概要)

大阪府豊能地域(豊中市、池田市、箕面市など)で鑑定評価した案件です。依頼者は、資産家の相続人で、複数所有している不動産の中で、鑑定評価を行うべき不動産(相続税の財産評価基本通達の価額より時価のほうが低い不動産)を調査し、鑑定評価を行いました。

大阪府の北部(豊中、池田、箕面)エリア
大阪府豊能地域(豊中市、池田市、箕面市など)

鑑定評価では、区分所有建物及びその敷地という類型に該当します。区分所有建物及びその敷地と言えば、区分マンションと考えることが多いと思いますが、今回は、区分所有店舗という、あまり評価することの少ないタイプだったのでテーマに選びしました。

この物件について、調査していくと、周辺に同じ特殊法人(公的機関が母体)が竣工した同じグレード、立地も隣り、建築年も同じくらいという比較の対象になりやすい区分所有店舗の取引事例が多数存在し、明らかに時価が相続税の財産評価基本通達による評価額より安かったので、鑑定評価を行いました。

相続財産の評価は、原則が財産の評価の基本通達であり、例外的に、鑑定評価が認められており、依頼者のためを考えれば、鑑定評価を行うほどではない(節税になる可能性があるが、費用対効果が低い)案件もあります。例えば、崖地の評価で相談を受けることがありますが、相続財産の評価は時価の80%がスタートライン(時価の80%が相続税路線価)のため、崖地の減価が20%を超えないと意味がなく(鑑定評価の標準的な土地価格は時価の100%がスタートライン意)、個別的要因(崖地)で30%の減価でも、費用対効果で微妙なところです。

最終的に、相続税の財産評価基本通達による評価額の半値未満の評価額となりましたが、税務調査でも指摘を受けませんでした。この物件に関しては、収益価格以外に区分所有店舗(同じグループのビル)の事例が多数存在したことが大きいです。

財産評価基本通達における時価

財産の価額は時価によるものとし、時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者問で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。

財産評価基本通達

不動産の「相続税評価額」と「鑑定評価額」

相続税の申告で、資産や負債の評価額は相続発生時の時価で評価します。この資産には、不動産も含まれます。不動産鑑定士は、適正な不動産の時価を鑑定します。そのため、当然に、鑑定評価額により相続税の財産評価をしても差し支えないと考える方が多いですが、国税庁は、原則として鑑定評価額による相続税の申告を認めていないのです。

相続税の申告の際に用いられる不動産の「相続税評価額」は、国税庁が発表している財産評価基本通達で計算することになっています。

それでは、なぜ「鑑定評価額」が、相続税の申告で、一般的な相続税評価額として認められないのでしょうか。それは、鑑定評価については、財産評価基本通達と違い複数の評価手法が存在することや、計算の過程において不動産鑑定士の恣意性(判断)の介入することが危惧されるからでしょう。

相続税評価額は、課税の公平が重視されており、その計算方法は納税者が誰でも容易に評価できるものであり、一律であることが必要となります。

これにより、相続税評価額は、誰が計算しても同じ評価額になるように出来ています。このことにより相続税は、課税上公平を実現しているのです。

このように相続税の財産評価は、原則が財産の評価基本通達であることには変わりがないのですが、例外的に、鑑定評価が認められており、実務上、鑑定評価額をもって時価とするケースは存在します。

それではどのような時に不動産鑑定士に頼めばよいのでしょうか。

よく分からない場合は、税理士のご紹介を受けて、信頼できる不動産鑑定士に診断してもらえば良いと思います。私は、今まで鑑定評価した相続財産の鑑定評価で税務調査で一度も否認されたことは無いですが、相続財産評価で、不動産鑑定士が評価することに合理性のある物件なら鑑定評価額が適正な時価として認められないことは少ないと思います。

具体的には、個別格差が大きな物件(無道路地等)、借地権や底地(収益性の違いにより鑑定評価額が有利あるいは不利になります)、収益物件(収益性が低い場合)、ゴルフ場、実際の取引市場の相場と乖離した物件(売りに出しても相続財産評価の水準では売れない物件)などが該当します。

不動産鑑定評価基準:区分所有建物及びその敷地

区分所有建物及びその敷地とは、建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に 規定する専有部分並びに当該専有部分に係る同条第4項に規定する共用部分の共有 持分及び同条第6項に規定する敷地利用権をいう。

不動産鑑定評価基準、国土交通省

不動産鑑定評価基準:区分所有建物及びその敷地の鑑定評価

区分所有建物及びその敷地固有の個別的要因

区分所有建物及びその敷地固有の個別的要因のうち主要なものを例示すれば次のとおりです。 

建物について

建築(新築、増改築)の時期、建物の床面積や構造、高さ、使用資材等、施工業者やその施行の内容、集会室等の有無、建物の階数、建物の用途、維持管理、居住者の状態、耐震性、アスベスト等の使用の有無

土地について

敷地の形状、空地の状況、敷地内施設の状態、敷地の規模、権利の態様

建物及びその敷地

敷地内における配置の状態、建物と敷地の規模のバランス、修繕計画の有無とその内容、修繕積立金の額 

専有部分

階層及び位置、景観や日照、仕上げの状態、維持管理、間取り、専有面積、エレベーターの有無や状況、敷地に関する権利の態様や持分、管理費等の滞納の状況

区分所有建物及びその敷地の鑑定評価

専有部分が自用の場合

専有部分が自用の場合の鑑定評価は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定す るものとすると規定されている。

積算価格は、一棟の建物及びその敷地の積算価格に、階層別、位置別の効用比により求められた配分率を乗ずることにより求めます。

専有部分が賃貸されている場合

専有部分が賃貸されている場合の鑑定評価は、運用益などを含む実際実質賃料に基づく純収益等を還元利回りで資本還元した収益価格、あるいはDCF法による収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して求めます。この場合、収益がメインで求めるのが標準ですが、数年後に退去予定の定期借家の場合や収益性の低い区分マンションの場合、その収益価格の規範性が高くないことも考えられます。すなわち、収益価格2000万円、比準価格3000万円(自用の場合)の収益区分マンションの場合、賃貸物件だからと言って、2000万円を重視すればよいのではなく、当該テナントが入居しつづけるのか、テナントの入れ替わりは何年周期かなどにも留意し、収益マンションが自用になる可能性、その場合の市場価格にも注意し、画一的に収益価格を過度に重視して評価することは適当ではないように思われます。

専有部分が賃貸されている場合において、以下に掲げる事項を総合的に勘案するものとすると規定されている。

1.将来における賃料の改定の実現性とその程度

2.契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件

3.将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件

4.契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数 

5.貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り

6.借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借をいう。)か否かの別

7.借家権価格

不動産鑑定評価基準、国土交通省
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